INTERVIEW

ひとり4役の総合力

高寺工務店では4代目の高寺匠が設計士・大工・営業・現場監督と、 ひとり4役を兼ねて家づくりに携わっています。 それぞれの仕事の役割やこだわり、その総合力から生まれる家づくりの強みをご紹介します。

高寺匠の自己紹介

お客様係

設計士

大工

現場監督

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高寺工務店四代目

髙寺匠

Takumi Takatera

二級建築士・大工

建築大工一級技能士

木造住宅耐震診断士

家具技能照明士

PROFILE

1977年 高寺工務店3代目・高寺初喜の長男として誕生
1996年 建築系の高校を卒業、都内にある専門学校に入学して設計を勉強
1998年 日本最大手の鉄鋼メーカー系列のハウスメーカーに就職
1998年 将来的な家業の後継に向けて強みを増やそうと、アクリルやアルミ素材を使った雑貨 メーカーに再就職。イギリス人デザイナーのもとで製作スタッフとして働き、著名なアーティ ストのMVの備品なども製作
2001年 同社の閉鎖に伴い、店舗設計の会社に転職。
飲食店の内装工事など現場スタッフとして従事
2004年 家具づくりを本格的に学ぶため退職し、長野県木曽郡上松町にある上松技術専門校 に入学。1年間、家具づくりを勉強
2005年 卒業と同時に家業の高寺工務店に就職。父のもと、本格的に大工の修業を開始。
大工仕事の奥深さを習得
2009年 「信州の伝統を未来につなぐ、新たな時代の大工棟梁」の育成をめざして開講した 「信州職人学校・伝統大工コース」第1期基礎コースを受講し、 全国の青年技能者の技能レベルを競う全国建設労働組合青年技能競技大会に出 場。以後、6年間挑戦し、うち5年間、長野県代表に選出
2013年 全建総連第29回青年技能競技大会で銀賞を受賞
現  在 現 在 上松技術専門校時代の同級生と結婚し、3児の父に

LIFE

2013年からランニングを始め、自己ベストはハーフマラソン1時間30分代、フルマラソンは3時間代後半です。また、最近はキャンプにハマっていて、家族や友だちと出かけています。
スポーツは小・中学時代はサッカー、高校では甲子園をめざして野球部に所属していました。
今はゴルフも楽しんでいます。

明治時代創業、110年を経た老舗・高寺工務店の4代目として

小さい頃から父が大工として働く姿を見て育ち、いずれは自分が家業を継ぐものだとの意志をもっていました。父はいつも夜遅くまで忙しく働いていましたが、それが嫌だという気持ちは不思議と全くありませんでした。
さまざまな仕事を経て2005年に家業に就いた当初は、早く大工の仕事を覚えたい焦りもあって父とぶつかることもありましたが、その延長線上に全建総連青年技能競技大会があります。信州職人学校の先生のすすめもあり、自分のレベルを知りたくて出場したのですが、2013年には全国銀賞を受賞し、自分の技術が確かなものであることが確認できたと同時に自信がつきました。
現在は高寺工務店4代目として、先代がこの地で脈々と築いてきたものを引き継ぎ、今まで以上に地元を大切にし、地域に根付いていきたいと考えています。
仕事量を増やすのではなく、お客様にとっても自分自身にとっても無理をしない家づくりをめざし、一つ一つの家に向き合っていくことがこれからの展望です。

昭和50年頃/当時職人との食事風景

2013/「全国青年技能競技大会」銀賞受賞

お客様係としての匠

家を建てる前に、どのようなご相談が多いですか?

すでに土地をもっているお客様や土地の購入を検討されているお客様からは「この土地に、あるいはこのくらいの坪数にどのような建物が建つか」という質問が多く見られます。土地柄、農地を宅地にする方も多くいますが、知り合いの行政書士が手続きを行うなど、横のつながりをもって対応しています。
機能面の相談も多く、特に当社の見学会等を通じて「暖かい家づくりをしている」というイメージを抱いているお客様が多くいらっしゃいます。そのうえでデザイン面に惹かれて来られる方も少なくありません。その場合は建てたい家のイメージをお聞きすることもあります。

エリアを限定しているのはなぜですか?

私たちの施工エリアは、上田・佐久・小諸.軽井沢といった東信地域を中心に、当社から車で1時間半圏内(半径約30km)としています。限定している理由は、目の届く範囲でお客様に何かあったらすぐに動ける体制をとっているから。そのため遠方からのご依頼はお断りしています。地域で顔が見える関係づくりを大切に、きちんと対応できる範囲での施工を心がけています。

お客様係として大切にしていることはなんですか?

工務店は地域に長く根ざしているので責任の所在が明確で、気候風土や地域性も熟知しているという強みがあります。しかし、工務店に依頼したいけれどその方法がわからないため、ハウスメーカーに相談に行っている人も多いと聞きます。そこで、ハウスメーカーとの相談の違いで一番覚えておいていただきたいのは、カタログを紹介するハウスメーカーの営業とは異なるということ。私は法令に即したお話しなどもすることができます。
また、私たちの年間の新築施工棟数は3棟ほど。一棟一棟と丁寧に向き合っているため、時間をかけて設計や施工を手がけていることも理解していただけたらと思います。

家を建てた後もご相談はできますか?

アフターケアはもちろん行なっています。定期点検は、新築直後に起こりやすい現象や不具合を確認する3カ月点検と、ワンシーズンを過ごしたことによる要望のヒアリングや調整を行う1年点検を行い、このほか夏と冬には必ずお伺いして現状のヒアリングをしています。追加で必要になった家具などの施工も、その際に伺います。また、何か不具合があればその都度お電話をいただき、調整や修理に伺っています。

設計士としての匠

設計で大切にしていることはなんですか?

ご相談時には、土地は決まっているか、予算、デザイン的なイメージや好きなものなどをお伺いし、イメージ写真もあればお持ちいただいて方向性を決めていきます。その際、お客様の服装や醸し出す雰囲気、趣味や、会話での表情などから伝わるものも確認しています。
そのうえで私が設計士として大切にしているのは、自分が住みたい家をつくるということ。常に自分がワクワクするような、想像力を働かせてくれるような家づくりを考えています。
図面は実際に現場を見て、お客様との会話を通して仕上げていきますが、最初はおおまかな図面を製作して、そこからある程度の部屋数や大きさ、こだわりたい部分などの要望を引き出し、具体化していくことが多いです。
なお、最近では費用がかかっても断熱面をしっかりとし、快適性を重視している人が多いと感じています。

デザインのこだわりを教えてください

デザインのこだわりは特にありません。お客様の好きなデザインに合わせて対応しているので、お客様のこだわりを細かく伺っていきます。また、実際に図面で決め切らず、お客様に施工中の現場にお越しいただいて最終的な設計を決めることも多々あります。多い時には週に一回、現場にお越しいただくことも。いくつかのパターンで悩まれているお客様に対してはそれぞれのメリットをお伝えし、一緒に検討していきます。
なお、素材などはあまり流行には左右されず、機能も踏まえて本当によいものを取り入れるようにしています。もちろん、流行のものがよいものであれば取り入れています。
また、壁紙などは多くの柄を使うお客様もいらっしゃり、もちろんご要望を優先しますが、相談をいただく場合はアドバイスもさせていただきます。外観もツートンカラーを好むお客様もいらっしゃいますが、同じ素材で色を変えると深みがなくなるため、外観の素材自体を色ごとに変えるご提案をしています。

設計の仕事の面白さはどのようなところですか?

設計は妄想の世界だと思っています。お客様の家ではありますが、自分の家を建てるようなつもりで、自分もいいと思える住まいを考えながらつくっています。素材も大工仲間のつながりからよいと聞いたものを取り入れたり、自分の家に実際に使ってみたいものを採用することも。また、ほかの工務店の内覧会や展示会、気になる建物は積極的に見に行っています。設計士としてデザイン上の遊び心を追求したい思いはあり、お客様に許されるようであれば挑戦的なデザインも取り組んでいます。

大工としての匠

住宅はもちろん家具作りまでおこなう

お客様と現場で打合せ

大工として大切にしていることはなんですか?

分業制のハウスメーカーと違い、工務店の一番の強みは設計と施工がともにできるところです。さらに当社の場合はお客様に現場に足を運んでもらう機会が多いため、職人の顔が見え、直接話ができるところも強みです。
私のように担当者が4役を務める工務店はなかなかありませんが、私はこの4役のなかでも大工の仕事が一番好きです。住宅を手がける大工のやりがいは、お客様が近くにいるので反応がすぐに見られること。しかし、お客様から現場で設計に関する要望があれば、そのときは設計士として現場で4役を務めています。
そうしたなかで大工として大切にしているのは、プロであるほかの大工が見て「すごい」と思われるような仕事をすること。手がけてみたいのは純和室で、特に茶室に興味があります。

家具はどのようなものを製作していますか?

家具製作のオーダーは多く、特にテーブルやテレビボードの要望を多く承っています。家具も家づくりと同様で、自分が使いたいと思うもの、お客様も私もお互いにいいと思えるものをつくることを意識しています。なお、ソファは製作しておらず、イスもあまり手がけていません。
イメージとしては、一般の大工がつくる簡素な家具ではなく、卓越した家具職人が手がけるこだわりが詰まった家具でもない、手技を生かした収まりのよい家具。多く使っているのは広葉樹で堅く丈夫なタモ材で、鉄を使った家具や、古い家具の改修なども行なっています。

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現場監督としての匠

現場監督として大切にしていることはなんですか?

工程管理はもちろんですが、家づくりはいろいろな知識や技術をもつ業者が協力して行うので、その職人たちと密にコミュニケーションを図り、助けてもらうための仲間づくりを大切にしています。そのため、お客様と専門の職人、両者の話を聞きながら意思の疎通を図ります。また、安全面など現場で事故や怪我もないようにも気をつけています。
そうした現場監督として現場でまず最初に行うのが、近隣への挨拶といった配慮です。ハウスメーカーや大手の工務店では一人の現場監督がいくつもの現場を掛け持ちしていて現場に不在のこともありますが、私は自分で大工をしながら現場監督を務めるので、現場に常駐していて何かあった場合はすぐに対応できることも強みです。
加えて、現場は多くの職人が携わるので材料が散らかったりしがちですが、1日の仕事終わりには常に現場をきれいに保つことも心がけています。

最後に。理想の家づくり”を教えてください

いろいろな意味で無理のない家、自分に合った背伸びをすることのない家が理想です。資金面や快適性も無理なく、心地よいバランスのとれた家づくりをめざしています。
なお、家づくりの完成間際に、お客様から涙を流すほどしみじみと「ありがとう」と言われたことがあり、私もうれしく泣きそうになりました。そういう場合はこちらの提案に応じて任せていただくことが多く、私を信頼していただけたと感じて達成感を覚えます。